
この本の著者、喜多あおいさんはテレビの現場などで活躍するリサーチャーを職業とされています。
本の帯には、タレントの森三中メンバーの夫としても知られる、放送作家の鈴木おさむ氏が推薦の言葉を寄せていて、興味を惹かれて手に取った本です。
情報術の本というと、これまでビジネスの現場や、学術的な情報整理の話しが一般的でした。
リサーチャーもビジネスといえばそうなのですが、ある意味で特殊な業界で働く著者ならではの視点は、独特です。
また、女性の視点で語られる情報術は、とても分かりやすく、読みやすい本に仕上がっています。
リサーチャーというのは、テレビ業界を中心に、華やかな現場で仕事をするイメージですが、実際には、同時に様々な仕事をこなす激務のようです。
情報バラエティー番組、ドラマ、クイズ番組、ドキュメンタリー番組などの裏方として、情報を集め、集約し、提案し、また、手元の情報の裏を取るなど、情報のプロフェッショナルとして、番組を支えています。
また、著者の喜多あおいさんは、リサーチャーという職業に就くまで、出版社、新聞社のデータベース構築、情報から発想を得てベストセラーを書き続ける作家の秘書など、一環して情報に関わる仕事をしてきています。
著者の、豊富な経験を通して獲得した情報術からは、多くのことを学ぶことができます。
まず、最も印象深かったのが「固有名詞」で話すことの大切さ。
情報に長けた人は、固有名詞に強いというのです。
有能な構成作家の方などは、インプットした固有名詞を良く覚えていて、そこに自分のアイデアをのせて、自分の言葉にして発信できるといいます。
また、固有名詞を多用する会話は面白いので盛り上がり、会話から発想を得たり、自分のアイデアを昇華して発想する機会も自然と増えるのでしょう。
物事を、「あれ」、「これ」、と言ってみたり、一般名詞を使うよりも、固有名詞で話したほうが印象に残り、強いインパクトを残します。
物事を、何となく見たり、聞いたりしている自分を振り返り、ぜひ取り入れたい習慣だと思いました。
また、情報収集に関しても、著者ならではの方法論が語られていて参考になります。
調べ物をするとなると、「まずインターネットで」となりますが、それはNG。
以前ならば、「図書館へ」ということになりますが、それも違うといいます。
まず、準備が肝心。何を調べるのかという目的を確認することが第一というのです。
その目的は、自分の知りたいことであったり、人に伝えるべきことであったりしますが、そこがはっきりしないまま調べても、成果は出ないと著者は断言しています。
言われてみると、的を得た話しで、調べ物のつもりが、いつの間にかネットサーフィンに興じてしまうことの多い自分の姿を反省します。
調べる目的が、きちんと固まって初めて、リサーチを始められるのです。
著者によると、リサーチはまず、全体をくまなく網羅した上で、情報を分類し、整理することが大切だそうです。
情報を網羅するには、書籍、新聞、雑誌、インターネット、対人取材をソースとすることが基本で、この順に情報を集めることが大切とのこと。
それぞれのメディアには、明確な役割があり、それを意識してこそ、有効なリサーチができるそうです。
そうして網羅した情報集めた上で、5W1Hにそって分類し、足りなければ補足し、最終的なリサーチ結果となります。
私も、日常的に、書籍、新聞、雑誌、インターネットに触れていますが、著者のいう役割を考えると再確認させられることも多く、日常生活にも生かせるアイデアを得ることができました。
ブログを書くこともそうですが、情報を発信することに関わる、マナーであったり、責任についても多く触れられています。
また、身の周りの情報と、どうつきあうかという視点からも著者の考え方は参考になりました。
最後に強く意識したいこととして、「分からない言葉を放置しない」、
これが情報力を高める上でとても大切であることを実感しました。
著者も含めて、情報を尊重し大切にする人は、メモを取ったり、その場で調べたり、努力を怠らないようです。
そうした積み重ねが、血となり肉となり、アウトプットできる情報として蓄えられていきます。
他にも参考になることが多い本です。
簡易な文章で、分かりやすく情報術を解説した良い本だと思います。
ビジネスにも、日常の調べ物にも活用できるアイデアを、ぜひ活用したいと思います。